人材育成を行う目的とは
人材育成を行う前に、「なぜ人材育成が必要なのか」という目的をはっきりさせておかなければなりません。
現在、多くの企業で積極的な人材育成が行われていますが、どのような目的で行われているのでしょうか。人材育成を行う主な目的をふたつ紹介します。
生産性向上のため
日本では、少子高齢化の背景から、多くの業界で人手不足が深刻化しています。今後、少子高齢化問題は、ますます深刻となり2030年にはおよそ1千万人の働き手が不足するともいわれています。
人材育成によって社員の能力が向上すれば、生産性が上がり、少ない人数でも効率的に業務を回すことができます。
わかりやすくいえば、1万人の社員がいる会社で生産性が5%上がれば、なんと500人分の人材不足を補えるのです。
今後、末永く企業の成長を継続させていくためには、人材を獲得したあとの育成は力を入れて行うべきといえるでしょう。
また、仮に人材不足ではない業界だったとしても、生産性をアップさせることは利益の最大化に貢献します。
従業員一人ひとりが、最大限の能力を発揮するためにも、きめ細やかな人材育成を行い、適切な配置を行うことが重要です。
自社の経営戦略に沿う人材を得るため
採用の段階では、どの企業でも優秀な人材を採用したいと選考を進めます。しかし、最初から能力の高い優秀な人材ばかりが集まることは少ないでしょう。
また、本当にその人自身の能力が高かったとしても、自社の経営戦略や抱えている課題の解決に沿った人だとは限りません。
企業によって、抱えている課題や経営戦略は異なります。そのため、自社の方針に基づいた人材育成が必要不可欠です。
早いうちから自社の方針に沿うように人材育成を実施しておけば、将来に必要な経営幹部の輩出も簡単になるでしょう。
代表的な人材育成の手段3選
「人材育成」といっても、企業によってさまざまな方法が用いられています。有名な企業が取り入れて話題になった人材育成方法もありますが、それが自社に合っているとは限りません。
なんとなく有名だからという理由で手段を選ぶのではなく、人材育成方法の内容を理解して、自社に合ったものを選びましょう。
以下に、3つの人材育成方法をご紹介します。
1.OJT(企業内教育)
OJTは、実際に業務を行いながら人材を教育していく方法です。「On The Job Training」の頭文字を取ってOJTと呼ばれています。
実務を通じて育成するため、研修期間が終われば即戦力となる可能性があります。多くの企業が取り入れている手法です。
OJTの研修は、上司や先輩が主となって教育します。流れは「やってみせる」→「説明する」→「やらせてみる」→「確認し追加で指導する」という4段階で指導するのが基本です。
マンツーマンで教育することも多く、個人の理解度や能力に合わせて育成できるため、確実な成長につながります。
また、教育を行っていく中で先輩や上司との交流が活発になるため、社内の人間関係を育めるほか、信頼関係が築け、研修終了後の業務もスムーズに行えるでしょう。
2.eラーニング
eラーニングは、インターネットを利用した育成方法です。オンラインで受講できるため、時間や場所に左右されず受講できます。事業所が散在している場合や、対象となる人数が多い場合に、とても有効な方法です。もちろん、リモートワーク中でも受講できます。
eラーニングのサービスによっては学習の進捗状況や成績なども一元管理できるため、管理者側も従業員の育成計画や目標を立てやすくなるでしょう。
しかし、eラーニングを受講するためには、安定したネットワーク環境でなければなりません。また、直接人が指導してくれるわけではないので、モチベーションの維持は各従業員の自己管理に依存します。
学習意欲が高い従業員は吸収が早く成長していきますが、自分でモチベーションを管理することが苦手な従業員は、学習効果が発揮されない場合があります。
3.集合研修
集合研修とは、OFF-JTとも呼ばれる研修方法で、実務とは別でセミナーや研修を受講することを指します。
外部サービスを利用した場合は、指導者のスキルによる教育の質のバラつきがなく、新たな気づきが得られる可能性も高いです。
体系的に知識を学べるほか、複数の人材が一度に研修を受けられるので同僚との人間関係が深まります。
しかし、実務外で学ぶことになるため、実務で即戦力になる可能性は低く、研修の応用が必要です。また、研修のためだけにかかるコストや時間を割かなければならない点もデメリットといえるでしょう。
人材育成で押さえておくべき4つのポイント
人材育成を行う際に、気を付けておきたいポイントや注意点がいくつかあります。これから紹介する4つのポイントを押さえて、人材育成を効果的なものにしましょう。
1.最初に人材育成の目的を整理する
まずは、なぜ人材育成を行うのか、目的を明確にしておかなければなりません。現在企業が抱えている問題点や、将来どのようになっていきたいかを整理し、目標を設定しましょう。
人材育成の目的を設定するときは、できれば経営層だけでなくさまざまな立場の従業員からも意見を聞いておくことがポイントです。
なぜなら、立場や役割、部署やチームによって人材に求めていることは異なるからです。
たとえば、経営層は人材育成によってリーダーシップ性の向上や変革意識の教育を行いたいと考えている一方、部署やチームでは今期の目標達成に向けた、営業力や提案力を強化したいと考えていることがあります。
さらに、教育を受ける対象となる従業員自身は、プレゼンテーションスキルや時間管理術など直接実務に関係することを学びたいと考えているかもしれません。
このように、各ポジションで異なる人材育成の課題をヒアリングし、目的を決定しなければ効果的な育成は難しいといえます。
2.スキルマップの作成も有効
さまざまな立場やポジションの従業員から人材育成に関する意見を聞いたあとは、スキルマップを作成するのがおすすめです。
スキルマップは、年ごとや役職に必要なスキルを洗い出し、時系列に表にしたものを指します。スキルマップにそれぞれの意見をまとめれば、おのずと人材育成の目的が見えてくるでしょう。
スキルマップの作成は、体系的な人材育成を行ううえでとても効率的な方法です。
3.現場と人事の両方の声を反映させる
人材育成の計画を立てるときには、実際に業務を行う現場と、採用活動や従業員の管理を行う人事、両方の見解を反映させられるようにしましょう。
現場の管理職を通じて現状を知ることで、実施する教育内容と実際の業務で求められる能力に、ズレが生じにくくなります。
教育内容は業務に必要な能力を向上させるものになっているか、しっかりヒアリングと検討を繰り返すことが大切です。
また、人事や経営者の声を参考にブラッシュアップすれば、将来的に必要となるスキルも盛り込めるでしょう。
4.実践機会を設けて即戦力を養う
OFF-JTやeラーニングなど、実際の業務内で行う人材育成を選ぶのであれば、実践計画を立てさせ、実際に業務を実践させる機会を設けることが重要です。
研修などで得た知識は、行動することで身に付きやすくなります。定期的に結果を振り返る時間を設け、上司と共有しアドバイスを受けることで成長につながりやすくなるでしょう。
東京・ビジネス・ラボラトリーでは、企業向けセミナーを行っています。このセミナーでは、心理学のメソッドを用いたプログラムによって、自分でメンタルをコントロールする技術を身に付けることが可能です。
効果の高い人材育成を行いたいなら、ぜひ一度ご相談ください。
まとめ
人材育成は、今後の企業の成長に必ず役立ちます。目的をしっかり持って、自社に合った人材育成方法を検討し、効果的に人材育成を行いましょう。